夜鷹の夢 | ゾイド徒然草

夜鷹の夢

 歌?

 ああ、夜勤の時に眠気払いによく口ずさむね。大概は出勤中にカーラジオで聴いた曲をエンドレスでというパターン。

 ところが昨晩はなぜか、ふと思い出して清田益章の歌を。え、聞いたことない? あの「スプーン曲げても信念曲げぬ」で有名な超能力者・清田益章。彼が何をトチ狂ったか15年くらい前にCDデビューしていたのだ。ムー読者である私は当然、発売日に購入している。ちなみに当時清田は、なぜか少女漫画誌「りぼん」でコラムの連載を持っていたので、被害を受けた少女も何人かいるはず。周囲に25歳前後の女性がいる人はぜひ「りぼん読んでた? 清田のCD持ってる?」と聞いてみよう。

 けれど、当たり前というか、これが全然売れなかった。超能力で売れるように念を送ればよかったのに。あるいは、売れないことを事前に予知して発売を取りやめるとか。しかし、清田の歌なんてもう何年も聞かなかったのだけど、まだフルコーラス歌えたのにビックリ。ああ、これが超能力の効果か。

「サヨナラッ神様~♪」

 眠気は消えなかったがね。

 

 少々前フリが長くなりすぎた。今日のお題は夜中の歌ならぬ、『夜鷹の夢』。アニメ『ゾイドジェネシス』の主題歌である。

 『ジェネシス』のOPを初めて見たときは若干地味すぎるかな、と思った。しかし、何度も巻き戻して見聞きすると非常に味がある。まだ見ぬ旅の仲間たちの姿には興味を引かれるし、月夜から一転、青空が広がる映像は美しく、テーマ性を感じさせる。何より、中程でルージが手に持ち眺める護符が気になる。護符にはこう記されている。

「均」

 誰なんだ、均!?

 

 実は、最近レイズタイガーにペーパーがけしている最中は、ほとんどこの『夜鷹の夢』を聞いていた。「Do As Infinity」のアルバム『NEED YOUR LOVE』に収録のこの曲、実は反戦歌である。『ジェネシス』OP版の歌詞では、当たり障りのない部分だけを編集しているが、本当はかなり陰惨な曲なのである。

 そも、タイトルにある「夜鷹」とはなんぞや。曲の主人公である、爆撃機パイロットの隠喩である。また、F-117 ナイトホーク攻撃機を指すとの説も出ている。ほら、我々が「ステルス」と聞いて頭に思い浮かべるアレだ。

 歌詞の内容はおおむね次のようなものだ。

 爆撃機が月の砂漠に出撃する。大義を掲げて無辜の民を虐殺し、帰還の途につくが対空砲火で撃墜される。最後は「長い夢を見ていた」という言葉で終わっているが、これはどう解釈したものか。死ぬ行くパイロットが人生を夢のように回想しているのか、あるいは出撃前に幻視をしたものだったのか。

 私は後者のような気がする。このまま進めば誰にも利しない惨禍が待っているが、今なら引き返せる。そう言っているのではないだろうか。そういえば今朝の新聞にも「憲法第九条」という文字が躍っている(私は改憲論者だがね)。

 しかし、反戦ということをこのような抽象的な形でしか効果的に発信できぬところに日本という国のいびつさを感じずにはいられない。しかも、センシティブな者にしか伝わらないのである。

 

 余談になるが、清田の歌の話に戻る。ふと気が付くと、『さよなら神様』を歌っていたはずが、いつの間にか終業時刻間際になっていた。そして眼前にはほぼ手つかずの仕事が! 夢を見てた。長い夢を。長い夢を。

アーティスト: Do As Infinity
タイトル: NEED YOUR LOVE